History

栃木県の部落に生まれ、酒乱の父の虐待に怯える日々を過ごす。
父が酒を飲むと、いつも暴力が始まった。

目の前で殴られ、涙声で叫ぶ母。
暴力を振るわれ、頭を抱えてうずくまる母を見て、溜まった涙がこぼれ落ちた。

苦しむ母の姿を見るのが辛くて、必死で自分の存在をアピールした。
もしかしたら暴力が止むんじゃないか、という淡い期待は、降りかかる拳とともに砕かれた。

頬を殴られ、体を床に叩きつけられる。
猛烈な痛みを感じるものの、自分が傷ついている間は、母を守ることができた。

その瞬間だけは母の体が傷つかないと思うと、安心することができた。
母を守りたいと強く思うと同時、「父さえいなければ」という思いは募っていくばかりだった。

父の虐待から逃れるように施設へ入所。

もう学校から帰ってきても家族はいない。
消灯時の豆電球は寂しさの象徴だった。
親がいない寂しさにすすり泣く声が静寂に響く。

「もうすぐお母さんが迎えに来てくれるからね」

優しくかけられたその言葉が叶うことはなかった。
嘘ばかりの大人が信じられなくなり、愛を求めてさまよった。

やがて、かまってほしさに悪さを始めた。
タバコ、万引き、ケンカ、振り向いてもらいたい一心で始めた悪さで仲間ができ、初めて受け入れられた気がした。

それと同時に問題児の烙印を押され、すべての悪さやトラブルの責任は自分に押し付けられた。

次第に、大人たちは敵へと変わっていった。

本当は、寂しいだけだった。
家族がいて、遊びに連れて行ってもらえて、いろいろと買ってもらえる普通の家庭が、心底羨ましかった。

孤独や寂しさの矛先は非行へと向かい、中学2年で暴走族の総代となった。
自分らしさを表現できる場は、すでに悪さの中にしかなかった。

母を守りたい。ついてきてくれる仲間を守りたい。
その気持ちが、力を求めさせた。

毎日ケンカと暴走行為に明け暮れ、父に刃物も向けた。

高校はわずか3ヶ月で退学。
悪事の果てに裏社会に足を踏み入れた。

金と権力さえあれば母や仲間を守れると思い、のし上がるために必死で努力した。
ついには2 度の逮捕を経験。

そこには、将来の自分の姿があった。
「こっちの方が楽なんだよね」と人生を諦め、刑務所の出入所を繰り返す老人。

このままだと自分の進む道に希望はないことを確信し、仲間を同じ目にあわせるわけにはいかない、と留置所で起業を決意する。

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出所後、暴走族仲間と共に資金ゼロ、人脈ゼロ、社会経験ゼロ、ボロボロのスコップ1 本から新明建設を起業する。
裏社会と表社会、二足のわらじの生活を始めた。

派手なアクセサリーに高級車、電話一本で動く何百人もの舎弟。
だが、どれだけ力を手に入れでも、心の穴が埋まることはなかった。

殺人事件、仲間の裏切り、組織の抗争……努力すればするほど狂っていく人生に絶望した。
一瞬たりとも気が抜けないこの世界に疲れ、死も考えた。

その矢先、ともに夢を目指した家族同然の仲間が、自分の真似をして飲酒運転で事故死する。
ブランド品を身につけ、女性をはべらせ、力と恐れで人を動かしてきた今までの行いを心から悔いた。

「二度とこんなことを繰り返しちゃいけない」

人生をやり直すことを決意。
裏社会からきっぱりと足を洗う。

表社会で生きて行く、と決めてからは早かった。
これまでもそうしてきたように徹底的にやるだけだった。

哲学、心理学、コーチング、経営、マネジメント、多額の借金をし、2,500 万円以上を投資して必要なことは徹底的に学んだ。

ひょんなきっかけから講演を依頼され、初めて人前で過去を告白する。

涙ながらに「勇気をもらいました」と何度も感謝の言葉をくれる聴講者に、初めて「真実の愛」を知った気がした。
人の役に立つことが、心から嬉しく思えた。

以来、口コミで評判となり、講演依頼が絶えなくなる。

同時期、子育てに悩む親や非行少年少女からの相談が殺到するようになり、自らの過去の体験を活かした無償の親子支援、更生活動を開始。

前例のない独自のメソッドが評判を呼び、数々のメディアで取り上げられる。
異色の人材育成家、慈善活動家として多数の賞を受賞。

虐待、離婚、借金、施設、非行、裏社会、逮捕。
決して恵まれているとは言えない幼少期、お世辞にもまっとうとは言えない過去。

「こんな自分でも変われたんだから、誰だってどこからでも変われる」

気づけば、確信がそこにあった。
この命を「世のため」「人のため」に使いたいという衝動があった。

年間1万人以上もの人と向き合う中で、人が変わるために最も重要なのは「自己愛」と「純粋性」という真実にたどり着く。

以後、経営者、アスリート、会社員、アーティスト、教師など、あらゆる業界で年齢・職種問わず人の眠っている才能や真の力を引き出す。

同時に、学校支援、少年院・刑務所支援、親子支援、被災地支援など、慈善活動も精力的に行い、「人材育成家」と「慈善活動家」の両輪の活動で、世の中を啓発している。

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